「いい人ほど、しんどそう」の正体。優しい社長が静かに消耗する理由

社員が同じミスを繰り返した。本当は、原因と次の対応をきちんと話したい。でも、社員を傷つけたくない優しい社長ほど、相手の落ち込む姿を見て言葉を飲み込みます。強く言えば辞めてしまうかもしれない。人手も足りない。そう考えて、「大丈夫。次から気をつけよう」と話を終える。

その場は丸く収まります。けれど、任せた仕事はまた社長へ戻り、評価の時期には判断できなくなる。相手を守ろうとしたはずなのに、自分の中には言えなかったことが残ります。

優しい社長が疲れるのは、優しい性格が経営に向いていないからではありません。相手の事情を想像できるからこそ、伝える、任せる、評価するという経営者の役割まで自分の中へ引き取ってしまうことがあるからです。

【優しい社長ほど疲れるのは、相手の反応まで背負うから】

社員へ伝える前に、いくつもの反応を想像します。

ここで指摘したら、落ち込むかもしれない。

期待を伝えたら、負担に感じるかもしれない。

評価を下げたら、生活に影響するかもしれない。

任せた仕事を戻したら、自信を失うかもしれない。

相手への配慮は必要です。ただ、起きるかどうか分からない反応まで社長が先に引き受けると、対話の前に結論が決まります。

「今回は言わない」

「自分で直した方が早い」

「評価には反映しないでおこう」

短期的には衝突を避けられます。しかし社員には、何が問題で、次は何を変えればよいのかが届きません。社長はまた確認と修正を引き取り、さらに疲れていきます。

【優しさと、曖昧にすることは違う】

厳しく言うか、優しく受け流すか。その二択にすると、優しい人ほど受け流す側を選びます。

でも、必要なのは強い言葉ではありません。

起きた事実を分ける。

期待していた状態を伝える。

本人の見立てを聞く。

次に確認することを決める。

たとえば、「前にも言ったよね」と責める代わりに、次のように話せます。

「同じミスが二回続いている。確認手順のどこで止まったと思う?」

「次は、提出前に何を確認する?」

「私が確認する部分と、あなたが判断する部分を分けよう」

相手を傷つけないことと、必要な事実を曖昧にすることは同じではありません。伝えないまま社長が引き取るより、相手が次に判断できる材料を渡す方が、長い目では相手を尊重することになります。

【飲み込んだ本音は、別の判断で戻ってくる】

言わなかったことは、その場で消えるわけではありません。

仕事を任せるときに不安になる。

賞与や昇給を決めるときに迷う。

別の小さなミスで、必要以上に腹が立つ。

会議で意見を聞いても、「どうせ最後は自分がやる」と思う。

その結果、社員から見ると、社長の判断基準が見えにくくなります。普段は何も言わないのに、ある日だけ強く反応する。評価の理由も分からない。優しさから始まった対応が、かえって不安を作ることがあります。

社長自身も、「こんなに社員のことを考えているのに、なぜ分かってもらえないのか」と感じます。

ここで必要なのは、もっと我慢することではありません。何を相手へ返し、何を経営者として引き受けるかを分けることです。

【相手へ返してよいものを、一つ決める】

すべての関わり方を一度に変える必要はありません。

まず、社長が先回りしているものを一つ選びます。

・ミスの原因を社長が代わりに考える

・次の手順を社長が全部決める

・相手がどう感じるかを社長が決める

・評価を伝えず、社長の中だけで調整する

・任せた仕事を、説明せずに巻き取る

この中から一つだけ、本人へ返します。

「あなたは、どこで止まったと思う?」

「次はどう確認する?」

「この仕事で、自分で決められる範囲はどこまでだと思う?」

返すことは、突き放すことではありません。本人が考える場を残し、必要な支援をそこで見つけるための対話です。

もし、社員へ任せた仕事を最後はいつも自分で引き取っているなら、「自分でやった方が早い」社長の会社で起きていること

https://www.1planet.jp/blog/shain-ga-sodatanaiも参考になります。

【社内では言えないことを、社内だけで処理しない】

社長には、そのまま社内へ出せない言葉があります。

社員への苛立ち。

評価への迷い。

先代への複雑な気持ち。

もう続けられないかもしれないという不安。

これらを社員へそのまま話せばよい、ということではありません。家族や先代へ話すことで、別の関係が動く場合もあります。

だからこそ、誰かを動かす前に、事実、感情、判断を分けて言葉にできる場所が必要です。紙に書くことでも、利害のない相手との対話でも構いません。

外へ出す目的は、社員の悪いところを並べることではありません。

「何が起きたのか」

「自分は何を恐れて言えなかったのか」

「次に相手へ返す判断は何か」

ここまで分かれば、優しさを捨てずに、曖昧さだけを減らせます。

抱え込みが「もう社長を辞めたい」に近づいているなら、会社を投げ出す前に確認したい3つのこと

https://www.1planet.jp/blog/koukeisha-yametaiで、会社と今の背負い方を分けてみてください。

【優しさのために、全部を背負わなくていい】

社員を大切にしたいことと、社員の判断まで社長が持つことは違います。

まず、自分がどこまで引き取り、どこで言葉を飲み込んでいるかを分けて見ると、次の対話を選びやすくなります。

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