社員から同じ質問が来るときに。社長の判断基準を共有する5項目

「これ、前にも答えたな」

社員から相談を受けて、そう思うことはないでしょうか。

その場では丁寧に答える。でも、数日後にはまた似た質問が来る。任せる仕事を増やしたはずなのに、自分が判断する回数はなかなか減らない。

そんなとき、一度確かめてほしいことがあります。

前回、社員に答えたとき、その答えを出した理由まで伝えていたでしょうか。

最近よく聞かれる質問を、一つ思い浮かべてみてください。その質問にどう答え、何を見て判断したのか。5つの項目に沿って書き出すと、次に社員が判断するときに渡せるメモになります。後半の記入欄は、そのままコピーして使えます。

答えを伝えても、次の判断に使えるとは限らない

私が支援しているある経営者も、仕事を任せるようになった後、同じ内容の相談に繰り返し答えていました。

話を聞いていくと、何を基準に判断しているかが、社員には十分に伝わっていないことが分かってきました。

たとえば、取引先から値引きを求められたとき。社長は利益率や取引の経緯、今後の発注の見込みを考えて、どこまで応じるかを決めます。

けれど、社員に届くのが「今回は、そこまで下げていい」という答えだけなら、次に条件が少し変わったとき、同じように決めてよいか分かりません。

社員がもう一度聞きに来るのは、判断に必要な材料が足りないからかもしれません。

その経営者が始めたのは、よく聞かれる質問を書き出し、自分が何を見て答えを出しているのかを言葉にすることでした。

会社全体のマニュアルを作ろうとすると、どこから手をつけるか迷うかもしれません。まずは一つの質問について、いつもの答えを少し詳しく残してみましょう。

社員に判断基準を伝えるために、書き出してほしい5つのこと

1.どんな質問が繰り返し来るか

「社員からの相談が多い」と感じたら、最近どんなことを聞かれたか、思い返してみてください。

「納期を早めてほしいと言われたとき」「いつもと違う依頼を受けたとき」など、実際に相談が来た場面を書きます。

直近のメールやチャットを見返すと、一つ選びやすくなります。

2.今回はどう答え、何を守ろうとしたか

そのとき出した答えと、守りたかったことを残します。

たとえば、納期の前倒しを断ったなら、先に約束しているお客様の納期を守りたかったのか。現場に急な残業を発生させたくなかったのか。

同じ「断る」という答えにも、理由があります。

3.何を確認して、その答えにしたか

判断する前に見た情報を書きます。

在庫、出荷できる日、先に受けている注文、現場の作業予定。普段は意識せずに確かめていることも、一つずつ書き出してみてください。

その情報を社員も調べられるか、一緒に確認しておきましょう。何を確かめればよいか分かっても、在庫や作業予定を見ることができなければ、また誰かに聞く必要があるからです。

4.次から、どの条件なら本人が決めてよいか

「状況を見て判断して」では、任せる範囲が伝わりません。

どの条件がそろえば、担当者がお客様に答えてよいのか。その前に、誰に何を確認してほしいのか。

担当者が読んで判断できるように、具体的に書いておきましょう。答えた後に報告してほしいなら、いつ報告するかも一緒に決めます。

5.どの条件なら、誰に相談するか

本人だけで決めずに、相談してほしい場面も書いておきましょう。

ほかのお客様との約束に影響する。追加の費用がかかる。必要な情報を確認できない。社内の担当者同士で意見が分かれている。

こうしたとき、誰に何を伝えて相談するのかまで決めます。

自分で決めてよい範囲と、相談する範囲が両方分かることで、任された側も動きやすくなります。

記入例:納期を早めてほしいと言われたら

以下は、使い方を説明するための架空の例です。自社の業務や権限に合わせて置き換えてください。

1.よく来る質問
お客様から納期の前倒しを頼まれた。受けてもよいか。

2.今回の答えと、守りたいこと
今回は受ける。先に約束した納期と、現場の作業予定を守れるため。

3.確認した情報
在庫が確保され、出荷担当が希望日の出荷を確認済み。ほかの注文への影響と追加費用がない。

4.本人が決めてよい範囲
3の条件がすべて確認できれば、担当者からお客様へ回答してよい。回答した内容は当日中に受注記録へ残す。

5.相談する条件と相手
一つでも確認できない、追加費用がかかる、ほかの注文に影響する場合は、回答前に営業責任者へ相談。希望日・確認できたこと・判断できない点を伝える。

この例では、お客様に回答する前に、出荷担当へ確認することになっています。

ご自身の会社では、誰に何を確かめれば答えを出せるでしょうか。そこが曖昧なら、確認する相手を決めるところから始めてみてください。

コピーして使える、判断基準の記入欄

下の項目をコピーして、普段使っているメモや共有文書に貼り付けてください。最近受けた質問一つについて、分かるところから埋めてみましょう。

対象の仕事・担当者:

1.よく来る質問、相談が起きた場面:

2.今回の答えと、守ろうとしたこと:

3.判断するために確認する情報と、その確認先:

4.次から本人が決めてよい条件と、報告のタイミング:

5.相談が必要な条件、相談相手、伝える内容:

記入日・一緒に確認した人:

実際に使って迷った点・追加した条件:

書いたものを、社員と一度使ってみる

書き終えたら、担当する社員と一緒に読み返してみてください。

同じ依頼が来た場面を想像し、何を調べ、どこまで自分で決め、どの条件で相談するかを説明してもらってください。

想定していた判断と違うところがあれば、どの言葉をどう受け取ったのかを聞き、伝わりにくかった部分を書き直します。

次に実際の相談が来たときも、このメモを見ながら確認します。前回と違った条件は何か。必要な情報は手に入ったか。判断する権限は伝わっていたか。

振り返るときには、相談の回数とあわせて、今回は自分で決められたこと、そのとき判断の根拠にしたことも聞いてみてください。どこまで任せられるようになったかを、具体的に確かめられます。

一度書いて渡した後も、実際の仕事で出てきた条件を足していく。その積み重ねで、自分の経験をほかの人も使える形にしていきます。

任せる範囲を決めようとして、手が止まったら

5項目を書いてみると、別の迷いが出てくることがあります。

利益と納期が両立しないとき、何を優先するのか。部長にはどこまで任せるのか。先代と自分で判断が違うとき、社員は誰に確認すればよいのか。

そこで手が止まったら、会社として何を優先し、誰にどこまで任せるのかを考えてみてほしいのです。一つの仕事の記入欄から、まだ決めていなかったことが見えてくるかもしれません。

「自分がやったほうが早い」から抜ける組織づくりセミナーでは、会社の優先順位、目指す未来、役割と判断の範囲、任せた後の対話を、4つのステップで考えます。

一人では整理しきれないと感じたら、今回書いた質問や、埋めるときに迷った箇所を持ってご参加ください。ご自身の会社で何から見直すか、一緒に考えましょう。

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まずは今日、よく聞かれる質問を一つ選び、いつもの答えに「なぜそう判断したか」を書き添えてみてください。

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